小澤征爾さん、大切な場所
2024年 03月 09日
遂にその日がきてしまった..
小澤征爾さんが旅立たれてから一か月。
その夜は、夫と小澤征爾さんの思い出話しを、遅くまで長く話した。
ご一緒した現場は厳しい張り詰めた世界であったが、こうして思い出されるのは笑い話しばかりで、私達は随分と笑った。もちろん、悲しみの重い知らせであったことは言うまでもないからこそ。
愛されるお人柄で、常に何に対しても
『ど真剣』『本気』なだけに、笑い話しも一つ一つが小さい事でも大きくなる、笑。
特に夫は、皆が知っている音楽との関わりの外から見る小澤さんではなく、内側からの小澤さんの姿と、エピソードを沢山もっていたから、今初めて聞く話しもあった。
とにかく可笑しかった。
私が小澤征爾さんの指揮で初めてティンパニを演奏したのは忘れもしない高校生の時、
ベートーヴェン:交響曲第7番
「えっ?あれ女の子なの?」
男だと思われてた..😂
その後、フランス・エヴィアン音楽祭
タングルウッド音楽祭
サイトウ・キネン・オーケストラ
水戸室内管弦楽団
アメリカ、ヨーロッパツアー、
素晴らしいオペラの体験も数々させて頂いた。
小澤さんのお陰で素晴らしい方達との出会いがあった。
晩年は、お身体を労わられながら、小澤さんの成城学園時代の同級生との合唱団「城の音」のプライベートなコンサートをクリスマスの頃に開催されていて、毎年お声をかけて頂いていた。「安江さんならなんでもやってくれるから」と、打楽器の楽譜などない、適当に入れて欲しいと。数年前まで続いていたそれが私にとっては最後の共演となる。
小澤征爾さんが人生で初めて指揮をしたのが中学生の時の合唱。まさにその当時の同級生が80歳代となり、年に一度集まって讃美歌、黒人霊歌、思い出の曲を小澤さんの指揮で歌うことを楽しみしている、とにかく温かい会だった。
どんなに世界のスター指揮者であっても、
小澤さんは自分の指揮者としての原点を忘れず、最も大切にし、仲間を大切にして、日頃の厳しい世界とは違う家族のような人達との、最も居心地の良い大切な場所だったのだろうと思う。
「山寺の和尚さん」とか、どんな小品でもマーラー振ってるのか⁉︎ と思うほど大振りで『ド真剣』な小澤さんの指揮に、楽譜のこちら側でクスッと笑う。
*写真はまさに合唱団の本番前練習風景
by sawako-ys
| 2024-03-09 13:12