知られざるティンパニ奏者の仕事
2024年 01月 11日
年を跨いで今年最初の本番。
なんと、ティンパニのペダリングが過去最強。
この仕事をするようになって、だいぶ耐性はできてきたけれど、
この楽譜を見て怒り出すティンパニ奏者は間違いなくいるし、
実際、こういう仕事は引き受けない方もおられる。
ティンパニの楽器の機能をまるで分かっていないとか、もはやそんな初歩的なことを
言っている時間はない。
楽譜をもらってから練習と同時進行で、
ティンパニ奏者はまず、ペダリングをどうするか、
4つのティンパニのそれぞれの音替えをどのようにしたら、
この作品の音が出せるか(間に合うか)を、考えて書き込む作業がある。
パズルのような作業。
オーケストラのどの作品も、世界中の多くのオーケストラで演奏されていて、
すでに誰かが使った形跡のある楽譜が渡され、そこに書き込みのあるティンパニペダリング図は、
並びがアメリカンだったり(私はジャーマンなので並びが左右真逆)、
まず修正液で綺麗に消して、場合によってはコピーし直してまっさらにするなど、
これは知られざるティンパニ奏者の地味な作業である。
そして大変時間がかかる。
今回は珍しく、すでに書き込みされたものが「ジャーマンスタイル」で私と同じだ。
そして筆跡もきれい。消さずにそのまま残して、まずは自分流のペダリングを考えて行くことにした。
書き込んでいるうちに
「ん?」
音の替え方がほぼ同じ。選ぶティンパニのサイズも同じ。
楽器は4台あって、どのケトルで何の音を取りたいかも、奏者の好みとかセンスが出る。
ジャーマンスタイルであることから、ヨーロッパの人が演奏したであろうとまでは推測できるが、
ドイツ人とも限らないし。
でもその後、他のパート譜にドイツ語のメモがあったと聞いて、ドイツのオケで演奏されていたことまでは考えられる。
どんどん読み進めて行き、音替え作業も進めるうちに、
その前者のちょっとした書き方、メモ、音の替え方に親近感を覚える。
どのインチに足をかけておけば間に合うかなど(秒の闘い🔥)!
フランネルの使い方まで。
そしてなんと見事なセンス!
誰だろう、兄弟弟子の匂いがプンプンする。
この手のペダリングはとんでもない苦労を伴い、またそれをたった一人で奏する孤独感を味わう仕事になるが、今回は、、
『ひとりじゃない!』
と心の中で叫んだ。なんて心強い!!
こんなこと、長年やっていて初めてかもしれない。いや初めてだ。
練習中も、本番中も、その筆跡に何度も助けられ、関心する場面が多々あった。
あぁ〜〜誰だろう、会いたい。
兄弟弟子か、従兄弟弟子ぐらいかもしれない。
世界のどこかで繋がっている喜び
なんて素晴らしい!
それにしてもひどいペダリング(泣)🥲
この苦労も孤独もまったく誰にもわからないけれど、
同じ仲間の存在を楽譜から感じて、
この仕事にあたたかい気持ちで立ち向かえた。
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by sawako-ys
| 2024-01-11 20:26
| 本番の舞台上